あれは小学4年生頃だったと思う。
来る日も来る日も野山を駆けずり回って遊んでいた私と友達数人は、ある農家の農具庫の脇で子犬を見つけた。
真っ白で、フワフワで、コロコロ。
真っ黒な瞳がジーーーッと私達を見つめ、鼻をヒクヒクさせてすり寄ってきた。
今思えば生後3ヶ月ぐらいだったろうか。
友達と、誰が飼うのかについて話し合いをしなければならなかった。
すでに犬がいる、親が犬嫌い、妹が小児喘息、など、状況は厳しかった。
うちは理髪店をしていて、「犬を飼うと、犬嫌いのお客さんが来てくれなくなる。」という理由で、ずーーーっと犬を飼えずにいた。
でも、実は父も母も犬は大好きであることを知っていた私は、こんな可愛い子犬を目の前にしたら、許可してくれるのではないか・・・と考えたのだ。
でも、甘かった。
その子を胸に抱いて、大泣きしながら「全部私が世話をするから、一生のお願いだから・・・」と訴える私に、父は「ダメなものはダメなんや!」と厳しく言った。
私もつい感情が高ぶって、父や母を非難するひどい言葉をぶつけたように記憶している。
いつまでも聞き分けのない事を言っている私の頬に、初めて父の手が飛んできた。
そして、泣きながらその子を元の場所に返しに行ったのだ。
それからは友達と給食のパンを持って学校帰りにその子に会いに行った。
数日間は会えたけど、その後は行方知れずになってしまった。
あの時、「大人になったら犬と暮らそう!」そう決めたのだった。
父にひっぱたかれた後、しばらくは両親と口をきかなかった。
ご飯も食べず、ストライキ状態。
あんなはかなげで可愛い子犬を、元の場所に返してこい!だなんて、私の両親は鬼か悪魔かと、腹が立って仕方がなかった。
でも、いつしか、「きっとあの時、両親も心が痛かったに違いない」と思うようになった。
なぜなら、両親は本当に犬が好きだから。。。
と言うのは、その事があってから10数年後に両親は紀州犬を迎え入れた。
すでに私は実家を出ていたので、写真でしか見ていないが、図らずも私があの時拾ってきた子犬とそっくりの真っ白でコロコロの子犬。
ケンと名付けられたその犬は、両親の愛情をたっぷり受けて、11年間幸せに暮らしたのだ。
これほど犬に愛情を注げる人達なら、私が子犬を拾って来たあの時、どうしても飼えないよほどの理由があったのだろう・・・と私は考えるようになった。
親の立場で考えると、小学生(私)と保育園(妹)の子供がいて、自宅兼店舗を新築して数年という状況だ。一人でも多くのお得意様を確保すべき時に犬を飼うことは、犬嫌いのお客様を逃すことになり得策ではないし、経済的にも精神的にも犬の面倒を見るまでの余裕がなかった・・・ということになるのかな。
去年のお盆に帰省した際、母に「私が昔、真っ白の子犬を拾ってきた時のこと、覚えてる?」と尋ねてみた。
そしたら「覚えてるよー、悪いことしたなーと思ってるんよ。けどな、あの時はお父ちゃんもお母ちゃんも生活に必死やったからなぁ。」と。
やっぱりそうだったのか。
そんなこんなで、今、茶々と暮らせる幸せをかみしめている私なのでした。
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コラ!茶々。
せっかくちょっといい話をしたのに、シャキッとせぃ!
だってお母しゃん、やっぱり話、長いんだもん。。。疲れちゃった。
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